re:Invent 2025開催2日目の今日、AWS CEOのMatt Garman氏によるキーノートが行われました。
今回のキーノートは"Why not?"をテーマに、強力なインフラ基盤と先進的な技術によってAWSが様々な課題の解決を可能としてきたことに焦点を当てた内容となっていました。大きなアップデートとして、AI関連サービスとコアサービスのアップデートが発表されました。
AI関連サービスアップデート
AIインフラ基盤
P6e, P6シリーズ追加
NVIDIA GPUを搭載したEC2インスタンスP6eとP6が利用可能となっています。従来のインスタンスに比べてパフォーマンスが大幅に強化されています。
Amazon EC2 P6e UltraServers and P6 instances
AWS AI Factories
カスタム型のAIインフラサービスである「AWS AI Factories」が発表されました。顧客の既存のハードウェアやデータセンター、ネットワーク接続上にAWS管理のAIインフラを構築することができます。
Amazon Web Services | AI Factories
EC2 Trn3 UltraServers
AWSの第4世代AIチップTrainium3を使用した「EC2 Trn3 UltraServers」がGAとなりました。
Announcing Amazon EC2 Trn3 UltraServers for faster, lower-cost generative AI training
AWS Trainium4
Trainium3に次ぐ最新のAIチップTrainium4の概要が発表されました。Trainium3と比較してパフォーマンス6倍(fp4)、メモリ帯域幅4倍、メモリ容量2倍とされています。
Amazon Bedrockに新モデル追加
Amazon Bedrockに新たに18モデルが追加されました。
Amazon Nova 2ファミリー
AWS独自モデルであるAmazon Novaの最新モデルAmazon Nova 2ファミリーが発表されました。以下の2モデルがAmazon Bedrockにて利用可能となっています。
- Amazon Nova 2 Lite
- 高速でコスト効率の良い推論モデル
- Amazon Nova 2 Pro (プレビュー)
- 複雑なマルチステップのタスクに適したモデル
- コードインタープリターやWebグラウンディングのようなビルトインツールを提供し、リモートMCPツール等もサポート
Announcing Amazon Nova 2 foundation models now available in Amazon Bedrock
Amazon Nova Omni
マルチモーダルモデルであるAmazon Nova Omniがプレビューとなりました。入力はテキスト、画像、動画、音声に対応しており、出力はテキストと画像に対応しています。
後述するAmazon Nova Forgeの早期アクセスでプレビュー利用が可能となっています。
Introducing Amazon Nova 2 Omni in Preview
Amazon Nova Forge
独自フロンティアモデルの開発サービスである「Amazon Nova Forge」が発表されました。Amazon Novaに独自データを学習させたカスタムモデルを作成し、AWS上に安全にホストすることができます。
Bedrock AgentCoreに新機能追加
Bedrock AgentCoreにて、以下の機能がプレビューで利用可能になりました。
- Policy in AgentCore
- ポリシーを適用し、AIエージェントの安全な挙動を実現する機能
- AgentCore Evaluations
- 実際の挙動に基づいてAIエージェントの品質を評価する機能
AI駆動型サービス
Amazon Quick
AIエージェントアプリケーションである「Amazon Quick」が発表されました。横断的なデータアクセス機能による独自データの調査・分析や、データの可視化、ワークフローの自動化を行うことができます。
Amazon Connectの音声表現強化
Amazon Nova Sonicとの統合により、より自然で感情豊かな音声表現が可能になりました。
AWS Transform Custom
AIエージェントによりコード変換をサポートするサービスです。Java、Node.js、Python等のアップグレードによるコード修正や、CからRustへのコード変換などを実現することができます。
フロンティアエージェント
以下の3つのAIエージェント機能が発表されました。
- Kiro Autonomous Agent (プレビュー)
- 開発エージェント。独立して作業し続けることができ、セッションやタスクを超えてコンテキストを保持する
- AWS Security Agent (プレビュー)
- セキュリティコンサルタントエージェント。コードレビューやテストを自動的に行う
- AWS DevOps Agent (プレビュー)
- 運用支援型エージェント。インシデントを調査し、運用の改善を図る
コアサービスアップデート
最後の10分間で、計25のアップデートが怒涛の勢いで発表されました。
コンピュート
EC2インスタンスタイプ追加
Lambda Durable Functions
最長で1年間実行可能な、マルチステップアプリケーションとAIワークロードの実行に適したLambda関数を作成する機能が発表されました。
ストレージ
S3の最大オブジェクトサイズ増加
S3の最大オブジェクトサイズが以前の10倍である50TBになりました。
Amazon S3 increases the maximum object size to 50 TB
S3 Batch Operationsが高速化
S3 Batch Operationsが最大10倍高速に実行できるようになりました。
Amazon S3 Batch Operations introduces performance improvements
S3 Tables Intelligent-Tiering
S3のIntelligent-Tierと同様に、データを自動的にコスト効率の良いストレージクラスに移行する機能が追加されました。
Amazon S3 Tables now offer the Intelligent-Tiering storage class
Automatic replication for S3 Tables
S3 TablesでAWSリージョンやアカウントをまたいだIcebergテーブルの自動レプリケーションがサポートされるようになりました。
Amazon S3 Tables now support automatic replication of Apache Iceberg tables
Amazon FSx for NetApp ONTAPでS3アクセスをサポート
Amazon FSx for NetApp ONTAPにS3アクセスポイントをアタッチできるようになりました。
Amazon FSx for NetApp ONTAP now supports Amazon S3 access
S3 Vectors
ベクトルデータの格納とクエリが可能なS3 Vectorsが正式にGAとなりました。
Amazon S3 Vectors is now generally available with 40 times the scale of preview
OpenSearchのインデックス作成高速化
OpenSearchのインデックス作成が10倍高速化されました。
データベース
RDS for SQL Server と RDS for Oracle のオプション追加
RDS for SQL Server と RDS for Oracle の最大容量が64TiBから256TiBと4倍に増加しました。また、RDS for SQL Server に関して、CPUの料金最適化で最大55%のコスト削減が可能となったことに加え、Developer Edition の場合はライセンス料なしで利用できるようになりました。
New capabilities to optimize costs and improve scalability on Amazon RDS for SQL Server and Oracle
Database Savings Plans
1年以上の利用で最大35%料金が節約可能なDatabase Savings Plansが発表されました。
Introducing Database Savings Plans for AWS Databases
ETL
Amazon EMR Serverless
Amazon EMRのサーバレスサービスであるAmazon EMR Serverlessが発表されました。サーバレス化によりアプリケーション基盤の管理が必要なくなることに加え、利用した分だけの従量課金となるためコスト削減が期待できます。
Amazon EMR Serverless eliminates local storage provisioning for Apache Spark workloads
運用
GuardDutyの脅威検出機能
GuardDutyの脅威検出対象がEC2とECSに拡張され、巧妙な攻撃にも対応できるようになりました。
GuardDuty Extended Threat Detection
Security Hub
AWS Security Hubが正式にGAとなりました。
CloudWatchにおけるデータ統合
運用、セキュリティ、コンプライアンスのデータがCloudWatch上で統合管理できるようになりました。
まとめ
AI関連サービスとコアサービスについて情報満載のキーノートでした。コアサービスは最後の10分に凝縮されており、メインはAI関連サービスの発表だったため、AWSのAIやエージェントサービスに対する本気さが伝わってきます。
Amazon Nova ForgeやBedrockのように独立したAI基盤サービスもあれば、Amazon Quick Suiteのように既存サービスをAI機能で拡張したサービスもあるので、今後の更なる開発でサービスがどのように展開されていくのか注目したいです。






