【Oracle Linux KVM】Veeam backup & replicationを利用したESXi環境からOracle Linux KVM環境への仮想マシン移行
初めに
インフラ技術部のOです。
2024年12月リリースの12.3系のVeeam Backup & Recovery(以降Veeam)でVMバックアップ機能を使用し、
クロスプラットフォーム間でのリストアが可能になりました。
そこで今回は、実際にVMware ESXi環境からOracle Linux KVM環境への仮想マシン移行の検証を行いました。
検証時は仮想マシン移行後に、そのまま起動したら使用できるのかなと想像していましたが、
そこまで甘くはなく、追加での対応が色々と必要でしたので検証の結果を要点をまとめて説明していきます。
環境構成
今回の検証を行った環境の構成は以下になります。
Veeamによる移行は、以下の方式(順序)で行います。
①「ESXi環境からVeeam環境へバックアップ 」
②「 VeeamバックアップファイルからOracle Linux KVM環境へリストア」
コンポーネント | バージョン |
VMware ESXi | 7.0.3, 20328353 |
vCenter Server Appliance | 7.0.3.00300 |
Veeam Backup & Recovery | 12.3.0.310 |
Oracle Linux KVM | 7.2.0 - 18.module+el8.10.0+90488+43ab228f |
Oracle Linux Virtualization Manager | 4.5.5-1.34.el8 |
Oracle Linux KVM環境用backup Appliance ※1 | - |
※1 Oracle Linux KVM環境用backup Appliance
ESXi環境からOracle Linux KVM環境へ仮想マシンをリストア(移行)する際に必要となります。
デフォルトではRocky Linuxで構成されます。個別に用意したLinux OSでも設定可能です。
移行検証を行なった仮想マシンOSバージョン
- OracleLinux 8.10, 9.5
- Redhat Enterprise Linux 8.10, 9.2
- Windows Server 2016, 2019, 2022
検証項目
今回の検証で確認した項目は以下になります。
① VMware ESXi環境からOracle Linux KVM環境への仮想マシン移行
② Oracle Linux KVM環境への仮想マシン移行時のIPアドレス/MACアドレスの引継ぎについて
③ 仮想マシン移行後に必要なドライバやOS設定の対応について
前提条件
- Oracle Linux Virtualization Version 4.5.4 または以降であること
- Veeam Backup & Replication Version 12.3 /oVirt KVM Plug-in Version 12.6.0.166 または以降であること
参考記事
Oracle Linux KVM/OLVMの構築については以下を参照ください。(弊社技術ブログ)
・Oracle Linux KVM 要件と構築について
https://www.reqtc.com/blog/oracle-kvm-1.html
・OLVM構築 - スタンドアロン方式
https://www.reqtc.com/blog/olvm---oracle-kvm-1.html
・OLVM構築 - セルフホステッドエンジン方式
https://www.reqtc.com/blog/olvm---oracle-kvm.html
Veeamにつきましては下記を参考にしてください。(Veeam公式マニュアルガイド)
https://helpcenter.veeam.com/jp/docs/backup/qsg_vsphere/system_requirements.html?ver=120
検証内容/手順
VMware ESXi環境からOracle Linux KVM(OLVM)環境への仮想マシン移行
- 事前準備
初めに、移行を行うために必要なドライバーとエージェントの事前準備を行います。
① Oracle VirtIO Drivers for Microsoft Windowsのダウンロード
Oracle Software Delivery Cloudまたは My Oracle Supportからダウンロードが必要になります。
② qemu-guest-agentのダウンロード(ISOファイルに変換が必要となります)
OLVMへSSH接続してログインしてダウンロードが必要です。
# コマンド例
# dnf install qemu-ga-winll
# ls -l /usr/x86_64-w64-mingw32/sys-root/mingw/bin/qemu-ga-x86_64.msi
# dnf install genisoimage
# cd /root
# mkdir build-iso
# cp /usr/x86_64-w64-mingw32/sys-root/mingw/bin/qemu-ga-x86_64.msi build-iso/
# mkisofs -R -J -o qemu-ga-windows.iso build-iso/*
# ls -l qemu-ga-windows.iso
作成したqemu-ga-windows.isoをローカル端末に転送します。
ローカル端末から「Oracle VirtIO Drivers for Microsoft Windows」と「qemu-ga-windows.iso」をOLVM管理ポータルにアップロードします。
※リストアを行う仮想マシンと同じデータセンターおよびストレージドメインを選択してください
- Veeamによる移行(ESXi環境からVeeam環境への仮想マシンバックアップ)
次に、Veeamを使用してESXi環境に存在する仮想マシンのバックアップを行います。
①移行対象仮想マシン用バックアップジョブを作成
②作成したバックアップジョブの実行 - Veeamによる移行(Veeam環境から Oracle Linux KVM環境への仮想マシンリストア)
ESXi環境の仮想マシンのバックアップ完了したら、次はVeeam環境からOracle Linux KVM環境へのリストアになります。
①仮想マシンのリストアの実行
※[Restore to oVirt KVM]から[Entire VM]を選択すること
以上で、VMware ESXi環境からOracle Linux KVM(OLVM)環境への仮想マシン移行については完了になります。
Oracle Linux KVM環境への仮想マシン移行後、IPアドレス/MACアドレスの引継ぎは可能か?
Oracle Linux KVM環境へ仮想マシン移行後は新NICの割り当てになるため、
IPアドレスおよびMACアドレスを自動で引継ぎすることは不可でした。
自動での引継ぎはできないため再設定が必要になります。(Windows/Linux系問わず)
今回、手順の紹介はいたしませんが、仮想マシン移行後にMACアドレスを手動で変更することは可能です。
MACアドレスを変更した場合、OLVM管理ポータルにて仮想マシンに割り当てられている仮想NICプロファイル(下記例ではovirtmgmt)のネットワークフィルター設定を「vdsm-no-mac-spoofing(デフォルト)」から「ネットワークフィルターなし」への変更が必要となります。
仮想マシン移行後に必要なドライバやOS設定等の対応について
ESXi環境からOracle Linux KVM環境に仮想マシンを移行した場合、
ディスクインターフェイスタイプがSATAになってしまうため、OLVM用エージェントの導入等の対応が必要になります。
OS系統別に必要な対応を説明します。
・Windows
①OLVM管理ポータルにて仮想マシン構成の変更
必要に応じて仮想マシンの構成を変更します。
例:OS情報、NW、仮想NICプロファイル、VNCのキーボードレイアウト、時刻設定など...
②仮想マシン起動/接続/NW再設定
仮想マシンを起動してOSにログインし、NW設定をします。
③qemu-guest-agent/VirtIOドライバーのインストール
事前にOLVMにアップロードしたqemu-guest-agentとVirtIOドライバーを仮想マシンにインストールします。
④仮想ディスクのインターフェース設定
Oracle Linux KVM環境への仮想マシン移行後はディスクインターフェースが「SATA」に指定されているため、
「VirtIO-SCSI」の場合は変更する必要があります。 (設定を行うには仮想マシンの停止が必要となります)ディスクのインターフェース設定が完了したら、仮想マシンを起動します。
・Linux系
途中まではWindowsと同じ手順になります。
①OLVM管理ポータルにて仮想マシン構成の変更
②仮想マシン起動/接続/NW再設定
③virtIO scsiドライバのカーネルへの組み込みの対応
Linux系は追加で「virtIO scsiドライバのカーネルへの組み込みの対応」が必要になります。
My Oracle Supportに情報公開がされていますので、
対応手順についてはそちらのドキュメントご覧ください(Doc ID 2960464.1)
④仮想ディスクのインターフェース設定
⑤qemu-guest-agentのインストールとサービス起動
yumコマンド等でパッケージをインストールしてサービスを起動します。
※必要に応じて[yum-config-manager --enable ol9_appstream]でレポジトリを有効にして実施してください
最後に
今回はVeeamを使用して、 ESXi環境からOracle Linux KVM環境への仮想マシン移行をしてみました。
結果としては以下の通りになりました。
検証項目 | 検証結果 |
VMware ESXi環境からOracle Linux KVM環境への仮想マシン移行 | Veeamバックアップ、リストア方式での移行は可能 |
Oracle Linux KVM環境への仮想マシン移行後、IPアドレス/MACアドレスの引継ぎは可能か? | 新規に割り当てされるので引継ぎはできないため不可(仮想マシン移行後に手動での変更は可能) |
仮想マシン移行後に必要なドライバやOS設定の対応について | OLVM管理ポータルから仮想マシン設定、OS追加設定(Linuxのみ)、ゲストエージェントおよびVirt-IOドライバーのインストールが必要 |
今回の検証で、想定通りにいかない部分も多々ありましたが、
ESXi環境からOracle Linux KVM環境への仮想マシン移行後に必要な対応が分かったのは、結果的に良かったです。
環境によっては本記事で紹介した内容以外にも設定変更が必要な項目はあると思いますので、
本記事を参考に、十分な検証を行うことを推奨いたします。