先日、Oracle社からoracle-database-preinstall-23cの無償版がリリースされたので、Oracle Database 23cと19cのpreinstall RPM実行結果を比較してみました。
なにか違いはあるのでしょうか。

※本記事の投稿時点ではOracle Database 23cは「Oracle Database 23c Free-Developer Release」ですので、正式リリース版とは実行結果が異なる可能性があります。

Oracle Preinstallation RPMとは

Oracle Databaseのインストールに必要なOS設定を自動的に行ってくれるRPMファイルです。
具体的な設定内容として以下のようにマニュアルに書かれています。（19cのインストレーション・ガイドより一部抜粋）

・Oracle Grid InfrastructureおよびOracle Databaseのインストールに必要な追加のRPMパッケージが自動的にダウンロードおよびインストールされ、依存性が解決されます。

・oracleユーザーが作成され、そのユーザーのoraInventory(oinstall)およびOSDBA(dba)グループが作成されます。

・必要に応じて、sysctl.confの設定、システム起動パラメータおよびドライバ・パラメータの値が、Oracle Database Preinstallation RPMプログラムの推奨値に基づいて設定されます。

RPMインストール

[環境情報]

23cと19cの結果を比較したいので検証環境を2つ用意しました。
OSはともにOracle Linux Server 8.8で、最小インストールです。

RPMファイルは勿論それぞれのバージョンのものを用意しました。

　23c Preinstallation環境：oracle-database-preinstall-23c-1.0-0.5.el8.x86_64.rpm
　19c Preinstallation環境：oracle-database-preinstall-19c-1.0-2.el8.x86_64.rpm

[結果]

以下の結果になりました。
詳細な設定値は表の次に書きます。

〇=23c、19cで設定の差異はない

設定項目	内容
RPMパッケージ	差異あり（詳細は後述）
OSユーザ	〇
OSグループ	〇
ネットワーク設定	〇
リソース制限	〇
カーネル・パラメータ	〇
GRUB設定	〇

　
結果についての詳細

・RPMパッケージ

※共通でインストールされたRPMパッケージは割愛します。

23c Preinstallation環境でのみインストールされたRPMパッケージ

checkpolicy-2.9-1.el8.x86_64
compat-openssl10-1.0.2o-4.el8_6.x86_64
policycoreutils-python-utils-2.9-24.0.1.el8.noarch
python3-audit-3.0.7-4.el8.x86_64
python3-libsemanage-2.9-9.el8.x86_64
python3-policycoreutils-2.9-24.0.1.el8.noarch
python3-setools-4.3.0-3.el8.x86_64　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

19c Preinstallation環境でのみインストールされたRPMパッケージ

libaio-devel-0.3.112-1.el8.x86_64
libstdc++-devel-8.5.0-18.0.2.el8.x86_64

19c Preinstallation環境でのみインストールされたパッケージには見覚えがありますね。
パッケージ名からの推測になりますが、開発環境関連のパッケージが23cでは一部不要になったということかもしれません。

・OSユーザ

# grep oracle /etc/passwd
　oracle:x:54321:54321::/home/oracle:/bin/bash

・OSグループ

# id oracle
　uid=54321(oracle) 　gid=54321(oinstall)groups=54321(oinstall),54322(dba),54323(oper),
　54324(backupdba),54325(dgdba),54326(kmdba),54330(racdba)

・ネットワーク設定

# cat /etc/sysconfig/network

　NOZEROCONF=yes

・リソース制限

# cat /etc/security/limits.d/oracle-database-preinstall-<バージョン名>.conf
oracle soft nofile 1024
oracle hard nofile 65536

oracle soft nproc 16384
oracle hard nproc 16384

oracle soft stack 10240
oracle hard stack 32768

oracle hard memlock 134217728
oracle soft memlock 134217728

oracle soft data unlimited
oracle hard data unlimited

※見やすいようにコメント部分は省略しています。

・カーネル・パラメータ

# cat /etc/sysctl.d/99-sysctl.conf

fs.file-max = 6815744

kernel.sem = 250 32000 100 128

kernel.shmmni = 4096

kernel.shmall = 1073741824

kernel.shmmax = 4398046511104

kernel.panic_on_oops = 1

net.core.rmem_default = 262144

net.core.rmem_max = 4194304

net.core.wmem_default = 262144

net.core.wmem_max = 1048576

net.ipv4.conf.all.rp_filter = 2

net.ipv4.conf.default.rp_filter = 2

fs.aio-max-nr = 1048576

net.ipv4.ip_local_port_range = 9000 65500

※/etc/sysctl.d/99-sysctl.confは/etc/sysctl.confのシンボリックリンクです。
※見やすいようにコメント部分は省略しています。

・GRUB設定

# grep GRUB_CMDLINE_LINUX /etc/default/grub
GRUB_CMDLINE_LINUX="crashkernel=auto resume=/dev/mapper/ol-swap rd.lvm.lv=ol/root rd.lvm.lv=ol/swap rhgb quiet numa=off transparent_hugepage=never"

以上です。

差異はRPMパッケージのみという結果でした。
23cも19cもほぼ同じ設定でしたので、バージョンアップしてもRPM以外は気にせず使用することが分りました。
Oracle Preinstallation RPMはインストール前のほとんどのタスクを自動的に実行してくれるものなので、影響を把握した上で効果的に利用しましょう。