エンタープライズ環境、つまり企業向けのミッションクリティカルなシステムにおいて、Oracleデータベースのリフトアップ(クラウド移行)を検討する際は、選択肢が多く最適解を見つけるのが難しいことがよくあります。ここでは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)を選択するメリットと、移行を成功させるためのクラウドリフトアップのベストプラクティスをわかりやすく整理して紹介します。
リフトアップの選択肢(概要)
ここ最近、Oracleデータベースのマルチクラウドソリューションが加わり、選択肢は以下のように多様化してます。
| 選択肢 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| OCI(BaseDB / ExaDB-D / ExaDB-XS) | Oracle製品との高い互換性と高性能な専用サービス(Exadata等)を提供 | ミッションクリティカル、ライセンス資産を活用したい場合 |
| AWS RDS for Oracle(Multi-AZ) | マネージドDBで運用負荷軽減。 ただしライセンスや可用性の制約に注意 |
中小規模で運用管理を簡素化したいケース |
| AWS/Azure/GCP IaaS - HA構成 (クラスタウェア使用) |
仮想サーバ上で既存構成を再現可能。 可用性は構成次第 |
既存運用を大きく変えたくない場合 |
| 脱Oracle - クラウドネイティブPostgreSQL (Amazon RDS for PostgreSQL/ Amazon Aurora) |
クラウドネイティブでコスト低減可能。 アプリ改修が必要 |
長期的なコスト削減とベンダーロックイン回避を重視する場合 |
| Oracleマルチクラウドソリューション (Oracle Database@AWS/ Oracle Database@Azure/ Oracle Database@Google Cloud) |
Oracleのマネージドを他クラウド上で利用。ハイブリッド戦略向け | 複数クラウド利用でOracleとの互換性を保ちたい場合 |
OCIを選択する主なメリット
| メリット | 内容・影響 |
|---|---|
| Oracle Databaseとの親和性 | オンプレミスのOracle環境と高い互換性を持ち、既存の運用資産をそのまま活用可能 |
| コストパフォーマンスの高さ | Bring Your Own License (BYOL)により、既存のOracleライセンスくを活用可能 |
| 予測しやすい価格体系 | 料金体系やアウトバウンド通信費が安価で、長期利用におけるコストが明確になりやすい |
| 高性能アーキテクチャ | Exadata Database Service や Autonomous Database により、オンプレと同等の性能を確保 |
| 移行方式の選択肢が豊富 | Zero Downtime Migration(Oracle提供)など、ダウンタイムを極力少なくするためのツールやソリューションが豊富 |
OCI以外のクラウドを選ぶ際のデメリット
- ライセンスコストの増大:オンプレと同数のCPUコアを必要とする場合、ライセンス費用が2~4倍に増える可能性がある
- 可用性の差異:AWS RDS for Oracle(Multi-AZ構成)やAWS/Azure/GCP Iaas HA構成(クラスタウェアを利用)を利用した場合、Oracle RAC構成よりも可用性が落ちる可能性がある
リフトアップ先を選定する上で重要な要素
リフトアップを成功させるためには、現状のデータベース環境や将来的になニーズを的確に把握することが不可欠です。
| 要素 | 確認ポイント |
|---|---|
| ライセンス | EE/SEや各オプションの所有数。BYOL適用可否 |
| 必要CPU数(負荷) | 現データベースサーバのCPU利用状況から見積もる必要コア数 |
| Oracle RACの必要性 | 高可用性・共有ストレージ要件があるか。RACが必須かどうか |
| クラウド利用状況 (他システムとの連携) |
アプリケーションサーバや周辺システムのクラウド移行状況とレイテンシ要件 |
| アプリケーションの 脱Oracleの可否 |
Oracle向けからPostgreSQL向けへ改修可能かどうか |
| 現オンプレ環境での重要課題 | 性能・可用性・運用負荷・拡張性など、現状の課題を明確化する |
Re:Qが考えるクラウドリフトアップのベストプラクティス
リフトアップの成功には、システムの規模や重要度に応じた適切な戦略が求められます。
Re:Qでは、さまざまな利用状況に応じたベストプラクティスを提案しています。
小規模 SE(Standard Edition 2)利用または
EE(Enterprise Edition)2 CPUライセンス以下
既に利用しているクラウドサービスにリフトアップする
- OCI- BaseDB、ExaDB-D、ExaDB-XS
- AWS RDS for Oracle(Multi-AZ構成)
- AWS/Azure/GCP Iaas - HA構成(クラスタウェア使用)
中・大規模 EE(Enterprise Edition)4 CPUライセンス以上
ライセンスコストを重視した選択をする
- OCI (ただし、アプリケーションサーバ間のレイテンシーを考慮する必要はある)
- Oracleマルチクラウドソリューション
(Oracle Database@AWS/
Oracle Database@Azure/
Oracle Database@Google Cloud)
中・大規模 EE(Enterprise Edition)4 CPUライセンス以上 かつ
アプリケーションの脱Oracle化が可能
アプリケーション改修費用を考慮してもコストメリットが出る場合は、
クラウドネイティブなPostgreSQL系へ移行する選択肢も有効
- 脱Oracle - クラウドネイティブPostgreSQL(Amazon RDS for PostgreSQL/Amazon Aurora)
まとめ
これらの要素を踏まえ、最適なリフトアップ戦略を策定することが、エンタープライズ環境における成功の鍵となります。
選択肢が多いからこそ、上記の「リフトアップ先を選定する上で重要な要素」をしっかりと整理・理解することが必要です。
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