はじめに
近年、ハイブリッドワークの普及に伴い、Webブラウザを介したサイバー脅威やクラウドからの情報漏洩リスクが急増しています。そこで注目されているのが、RBI(Remote Browser Isolation:リモートブラウザ隔離)技術です。
RBIとは、VDIの代替として期待されている技術であり、ユーザーのWebセッションをクラウド上のコンテナ内で安全に実行する技術です。万が一、悪意のあるJavaScriptやマルウェアが含まれるサイトにアクセスしても、ローカル端末には安全な画面情報しか転送されないため、エンドポイントの感染を防ぐことができます。
今回は、SASE/SSE市場を牽引する主要ベンダー3社のRBI技術の比較レビューをしました。
RBI技術として共通している部分
コンテナ隔離というRBIの構造上、基本的にどのベンダーでも実現している標準機能として以下があります。
- Webブラウザ上でのアクションの制御(ファイルのアップロード/ダウンロード制限、コピー/ペースト制限、印刷制限など)
- セッション切断時におけるキャッシュ・データ自動破棄機能(コンテナ破棄に伴うエンドポイントへのデータ残留防止)
- 未知のドメインや新規登録ドメイン(NRD)、危険なWebサイトへの安全なアクセス手段の提供
主要ベンダーのRBI比較表
以下、主要3社のRBI技術の違い比較した表になります。
レンダリング方式
- Palo Alto:第4世代ハイブリッド方式を採用。ピクセルベースとベクトルベースのレンダリング方式を組み合わせ、安全性を担保しつつネイティブブラウザに極めて近い高速な応答性を実現します。
- Zscaler:純粋なピクセルストリーミング方式を採用。ページの視覚的表現(画像)のみをデバイスに送信するため、エンドポイントで一切コードを実行させない完全な隔離を徹底します。
- Netskope:Webサイトの危険度や要件に応じてピクセルレンダリングとDOMベース(DOMミラーリング)を動的に使い分けるマルチモード(ハイブリッド)方式を採用し、安全性と操作性を両立します。
エージェント
- Palo Alto:
エージェント有の場合(管理対象):GlobalProtect(GP)を利用したアクセスのほか、拠点からのRemote Network(RN)やExplicit Proxy(EP)経由でのアクセスに対応。
エージェントレスの場合(非管理対象):Secure Agentless Access(SAA)との組み合わせで、個人端末からエージェントなしでアクセス可能。
- Zscaler:
エージェント有の場合(管理対象):Zscaler Client Connector(ZCC)を導入した管理対象デバイスから、ポリシーに基づきセッションを自動分離。
エージェントレスの場合(非管理対象):端末にエージェントを入れずにブラウザから直接アクセスする「クラウドブラウザ」や、「ブラウザ拡張機能」「エンタープライズブラウザ」を介してセキュアに接続。
- Netskope:
エージェント有の場合(管理対象):Netskopeクライアントの導入が主流
エージェントレスの場合(非管理対象):ネットワークレベルでのトラフィック転送を利用することで、エージェント不要でシームレスなアクセスに対応。
各社の特長
- Palo Alto:ハイブリッド方式によるネイティブに近い操作性
第4世代のアイソレーション技術(ピクセル+ベクトル)により、Microsoft 365などの動的Webアプリでも低遅延なレスポンスを維持します。
- Zscaler:用途に応じた3つの提供形態(クラウドブラウザ/ブラウザ拡張機能/エンタープライズブラウザ)
クラウドベースの脅威隔離を行う「クラウドブラウザ」、 既存ブラウザにBDR,ポスチャやデータ制御に基づくアプリアクセス機能を追加する「ブラウザ拡張機能」、 専用のChromium環境でセキュリティを標準化する「エンタープライズブラウザ」を展開。端末の管理状態や必要なガバナンスレベルに応じた柔軟な使い分けが可能です。
- Netskope:Targeted RBIを使用したリスクベースの柔軟な分離
すべてのWebトラフィックではなく「未分類サイト」や「高リスクドメイン」「個人用アプリ」などをピンポイントで自動分離。セキュリティ効果を最大化しつつ、インフラ負荷や不要なアクセス制限を防ぎます。
RBI選定基準
RBI技術の導入・リプレイスを検討する場合、以下のシチュエーションに応じてベンダーを選ぶのが最適です。
※統合プラットフォームはないものとする
- Palo Alto Networks を導入すべきシチュエーション
「隔離による遅延やUX低下を徹底排除し、業務効率を落とさずに大規模導入したいとき」Palo Altoは「ピクセル+ベクトル」を融合した独自の第4世代レンダリング技術を採用しており、他社に比べてネイティブブラウザと変わらない圧倒的な操作性(UX)を誇ります。この優れた操作性により、業務効率の低下や苦情によるヘルプデスクのパンクを回避できる点が最大の強みです。
- Zscaler を導入すべきシチュエーション
「ブラウザ拡張や専用ブラウザの配布だけで手軽に始めたいとき」Zscalerは、プラットフォームがなくても、既存のブラウザに「ブラウザ拡張機能」を入れるだけで、移行作業不要で迅速にデータ制御やポスチャ(端末状態チェック)機能を追加できます。また、業務専用の「エンタープライズブラウザ」をユーザーに配布するだけで、セキュリティやデータ保護が一貫した専用のChromiumブラウザに標準化できるため、ブラウザ単位のスモールスタートが最も容易です。
- Netskope を導入すべきシチュエーション
「Web全体ではなく、未分類サイトや個人用アプリ(SNS/Webメール)を狙い撃ちで制御したいとき」Netskopeの最大の強みは、Web全体を無差別に隔離するのではなく、「未分類ドメイン、リスクの高いWebサイト、特定の個人用アプリケーション」だけを狙い撃ちでポリシー制御(分離)する「Targeted RBI」の柔軟性にあります。プラットフォームがない状態でも、シャドーIT(個人用クラウド)へのデータ持ち出し制限や、過剰ブロック(Webサイトの見すぎによる業務阻害)の防止をピンポイントで実現したい場合に最適です。





