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クラウド時代に向けて進化するRDB ~Part2~

皆さん、こんにちは。人事教育部のK.Mです。

第1弾をご覧になった方はご存じだと思いますが、人事の私がエンジニアの皆さんと話をするのに最近のトレンドも理解していないようではまずい!ということで、現在のトレンドを当社のシニアコンサルタントにレクチャーしてもらうことに。その様子を折角なので、皆さんにもお届けします。本日はその第2弾です!

K.M: Hさん、お疲れ様です!本日は、クラウド時代に向けた各RDB製品の独自の進化についてですよね。
T.H: そうだよ、オンプレミスで圧倒的な実績を誇るOracle DatabaseやSQL Serverのほか、Amazon AuroraやGoogle Cloud Spannerも触れていくよ。
K.M: 楽しみ!同じRDBでも、差別化をするために独自の製品思想を持ってたりしますもんね。よろしくお願いします!

クラウドという新しい稼働環境の登場

皆さんもご存じの通り、2010年代になると、リレーショナルデータベースはクラウドという新しい稼働環境を得ました。クラウドは、国境を越えて世界に広がるデータセンター群の中で稼働する大量のサーバーと、無限のストレージ容量にデータを保存することができます。

これはオンプレミスとは大きく異なる稼働環境です。そしてリレーショナルデータベースは、このクラウドに最適化したものに進化を始めました。次にクラウド時代の代表的なリレーショナルデータベースを4つ紹介します。

可用性の考え方と規模の概念を変えた「Amazon Aurora」

「Amazon Web Service」(AWS)が2014年に発表した「Amazon Aurora」は、MySQL互換の商用リレーショナルデータベース並みの性能と機能を実現し、さらにデータベースのコア機能がクラウド専用に開発されました。クラウドに最適化された実装の例としては、Amazon Auroraは標準で3つの"アベイラビリティゾーン"にまたがって稼働するという特長が挙げられます。

従来のオンプレミス用のリレーショナルデータベースでは、可用性を高めるために複数のサーバーをクラスタ化することで、「あるサーバーがダウンしても他のサーバーが生き残っているため、システム全体としては稼働し続ける」ことを実現しています。しかしオンプレミスでは、基本的にすべてのサーバーは同じデータセンター内で同じラックやサーバールームに格納されているので、例えばラックごと、あるいはデータセンターごとに、災害や事故などが起きてしまうと、サーバーが全滅し、システムの稼働は完全にストップしてしまいます。

しかし、Amazon Auroraは3つのアベイラビリティゾーン、すなわち離れた場所に存在し、独立した建物、設備や電源などを備え、高速なネットワークで接続された3つの別々のデータセンターにまたがって1つのリレーショナルデータベースを稼働させることを実現しています。

つまり、あるサーバーが落ちても、他のサーバーが稼働し続けることでシステム全体が稼働し続けるのはもちろんのこと、あるデータセンターが丸ごと破壊されたとしても、ほかのデータセンターが生きている限り、Amazon Auroraは稼働し続けることが可能となります。クラウドに最適化されたAmazon Auroraの可用性は、従来のオンプレミスを想定したリレーショナルデータベースの持つ可用性の考え方や規模を大きく塗り替えるものとなっています。

世界規模のリレーショナルデータベース「Google Cloud Spanner」

Googleが2017年2月に発表した「Google Cloud Spanner」は、さらに規模が拡大し、世界規模、地球規模に分散したリレーショナルデータベースと言われています。

この規模になると、光のスピードを上限とする通信速度では分散処理のための通信に時間がかかりすぎるため、従来のリレーショナルデータベースで用いられていた分散処理技術とは大きく異なる技術を使って構築されています。

その一例が原子時計の採用です。

Google Cloud Spannerでは、例えばすべてのサーバーの時刻をGPSと原子時計を用いて正確に同期し、すべてのトランザクションに厳密なタイムスタンプをつけることで、地球規模の分散環境におけるトランザクションの順番や一貫性の保証を実現しています。

さまざまなクラウドサービスやテクノロジーとの親和性が高い「Microsoft SQL Server」

Microsoft社が1990年代から開発を積み重ねてきた古参の商用リレーショナルデータベース。
1998年に発表された SQL Server 7から本格的に商用リレーショナルデータベース市場に参入してきました。企業向けの高機能なシステムから、組み込み系の小規模なシステムまで幅広く対応しています。

SQL Serverは、他のリレーショナルデータベースと比較してWindows製品との親和性が非常に高いことに加えて、エンタープライズ市場での実績が豊富でコストパフォーマンスでのバランスが良いといった強みがあり、OSにWindows Serverを選択するのであれば必ず選択肢に入れるべきであると言えます。

2019年秋にリリースされた最新版のSQL Server 2019では、従来のバージョンにはなかったさまざまな機能が盛り込まれています。

 ・AIやビッグデータ分析に向けたデータ分析基盤の強化
 ・データベースエンジンの機能拡張(UTF-8対応)
 ・プラットフォームの多様化(Linux版の機能強化。Windows版との差の減少) など

また、MicrosoftのクラウドサービスであるAzure上のSQL Databaseとの連携がスムーズで、環境移行なども手軽に行えるようになっており、クラウド時代を見据えたものとなっています。加えて、AWSやGoogle、または日本のクラウドサービスベンダーがSQL Serverとの接続サービスを提供しており、さまざまなクラウドサービス上でかつ仮想環境等のさまざまなテクノロジー上で動作するところも強みです。

完全自動化を実現する「Oracle Autonomous Database」

AWSやGoogleといったクラウドに大きな強みを持つベンダーが、クラウドの分散環境に適合したリレーショナルデータベースの進化を実現する一方で、従来のオンプレミスにおけるリレーショナルデータベース市場のリーダーであるオラクルは、別のアプローチでクラウド時代のリレーショナルデータベースに取り組んでいます。

それはデータベース運用の完全自動化です。

2017年10月にオラクルが発表した「Oracle Autonomous Database」は、これまで管理者が行う作業だったデータベースの運用作業、例えばバックアップ、セキュリティパッチの適用、チューニング、ディザスタリカバリの設定、障害時の対応といったさまざまな作業を、データベース自身が自動的に実行するようになります。オラクルは、「世界初の100%自動化された自律的なデータベース」と紹介しました。

運用自動化の背景には、オンプレミスでのデータベース運用で蓄積してきたノウハウを含め、さまざまな条件での運用状況を機械学習によってコンピューターが学習できたことにあります。これも、大量なコンピュータリソースやパワーを利用可能なクラウド環境が実現させたものと言えるでしょう。

クラウドベンダーによるリレーショナルデータベース選択肢の拡大

これまで企業向けの商用リレーショナルデータベースは、オラクル、マイクロソフト、IBMといった有力ベンダーが市場をほぼ独占してきました。また、システムの規模や要件によっては、オープンソースのリレーショナルデータベースも選択肢となってきました。これからクラウドの時代に入るにあたり、クラウドに最適化した形でリレーショナルデータベースが新たな進化を始め、従来からのベンダーにクラウドベンダーも加わる形で選択肢が増えてきています。

短期的には、災害対策構成を含めたデータベース運用できるかがポイントになります。中長期的には、クラウドネイティブ化、マルチクラウド化に対応できるかを見ていくべきです。

デジタル変革への対応では、既存のデータは主にリレーショナルデータベースで扱うことになります。これはクラウドになっても変わりません。一方で、デジタル変革のための新しいアプリケーション、たとえばIoTの技術領域では、データを集め機械学習で予測するといったものは処理速度(パフォーマンス)が重視されます。そして、デジタル変革を進めるとなれば、スクラップ・アンド・ビルドで取り組むことになり、これはクラウドが前提となりコストと開発生産性の高さで選ぶことになります。

用途によって求められるものが変わるので、データベースの選択はこれまで以上に慎重にならざるを得ません。データベースに100%に近い安定性や信頼性を求めると、デジタル変革が遅れてしまうことにもなります。なのでデジタル変革のために新しいデータベースの利用を考慮する必要も出てきます。柔軟な選択ができるようにしても、選んだものをずっと使い続けるわけではありません。ただし、いったんデータベースを決めて運用を始めると、ほかのデータベース製品への移行がきわめて難しくなることを念頭に置いておく必要があります。個々の業務システムにとって何が最適なリレーショナルデータベースなのかは、これまでと同様、あるいは選択肢が多くなったことで、これまで以上に慎重な選択が求められることになります。

T.H: どう?
K.M: うーん、RDBだけとってみても様々ですね。既存のデータを扱うにしても、それぞれの強み・特徴を理解した上で今まで以上に慎重な選択が必要というのはうなずけます。ここに更に、デジタル変革への対応とかが入ってくるわけですね。デジタル変革が何を指しているのかが、私のなかではそもそも曖昧ですが。苦笑
T.H: じゃぁ、次回はその点についてできる限りわかりやすく、解説しよう。
K.M: はい、よろしくお願いします。

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