レック・テクノロジー・コンサルティング株式会社TECH BLOG

Modern Cloud Day Tokyo ~Oracle Cloudの行方~

こんにちは。Re:QのA.Yです。

2019年8月6日と7日に開催されたOracle社主宰のイベント「Modern Cloud Day Tokyo」に参加しましたので、今回はその内容を振り返りたいと思います。

-+-+-+-+-+-+-+-+-Modern Cloud Day Tokyoとは-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
Oracle Cloudに関する最新の技術情報や事例の紹介、Cloudサービス全体の動向を紹介するセミナーです。一部ハンズオン形式で、実際にOracle Cloudのサービスを触れるセッションも用意されていました。2019年5月にOracle Cloudは東京リージョンを使用開始しており、日本でのシェア拡大を意識した内容となっておりました。
-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

日本におけるOracle Cloud

日本国内でもクラウドサービスの利用は急速に拡大しており、各種調査結果によると、2018年度までの国内クラウドサービス利用者ランキングでは、AWS、Azure、GCP、IBM、富士通が上位を占めています。Oracle Cloudは、いわゆるNext10と呼ばれる第2集団と位置づけられています。

一方、日本国内におけるDBプロダクトとしては、長期に渡ってOracle Database(以下、Oracle)がトップシェアを誇っており、現在においてもその地位は健在です。

つまり、システムをクラウド化したいというユーザの要望がある反面、既存のDBサーバは依然としてオンプレでOracle、または他社クラウド上でOracleを限定的に(他社IaaS上にOracleを導入してもRACやDGは使えない、など)使っている、という現状が透けて見えます。

もちろん、コストなどの理由により、すでにOracleから脱却し、例えばAWSのAuroraやRedshift、Azure Databaseへ移行に成功した、という事例もないわけではありませんが、やはりDBプロダクトの変更を伴う移行は、各クラウドベンダーの触れ込みほど容易ではないですし、実際に使ってみたら性能面、コスト面で期待した成果が表れなかった、という声も聞きます。

Oracleとしても何年も前からOracle Cloudの開発・普及に力を入れてきましたが、一番のネックは「日本にリージョンがない」だと推察しています。あるいは、日本に限って言えば、誰もファーストペンギンになりたがらない、という事情があるかもしれません。それ以外にも、極端にシビアな性能を求められるシステムの場合、そもそもDBをクラウドに移行することに対する懸念があるのかもしれません。

そうこうしているうちに、ついに今年の5月、Oracle Cloudの東京リージョンが開設され、年内には大阪リージョンも開設されるという話です。Oracle Cloudの東京リージョンは第2世代(Gen2)クラウドと呼ばれ、高性能なサービスが提供されます。そして、Gen2の目玉であり、Oracle反攻の旗手となるのが「Autonomous Database」です。

Autonomous Databaseとは

一部Oracle OpenWorld Asiaの技術ブログの内容と重複しますが、Autonomous Databaseについて改めて説明いたします。

Autonomous(=自律)の名の通り、以下の3つの機能が柱となっています。

●自動運転
  -リアルタイム統計などによる自動チューニング
●自動保護
  -データファイル、バックアップから通信に至るまで全て暗号化
  -セキュリティパッチの自動適用
●自動修復
  -Active Data Guard、Flashback機能などを使用し、不具合発生時に機械学習により解決方法を
   リポジトリから検索し、自動適用

 
Autonomous Databaseのバックエンドには、Oracle Exadata Machineが動いており、データベースに特化した、圧倒的な性能をサービスとして享受することができます。

かなり雑なまとめ方になりますが、シンプルに説明すると

Autonomous Databaseとは、「クラウドで高性能・高可用性なExadataが使えて、
さらに機械学習を用いた運用管理機能により運用コストも削減」
というイメージでしょうか。

ワークロードに応じて、Autonomous Databaseには以下の2つのタイプが用意されております。

●ADW(Autonomous Data Warehouse)
  -分析や集計といった大量のデータを扱う処理向けの列志向データベース
  -データウェアハウス(DWH)、データマート、データレイクなどに利用
●ATP(Autonmouns Transaction Processing)
  -大量のトランザクション処理など、行操作に特化

今回のセミナーのセッションに参加して、他社クラウドサービスが提供しているデータベースと比較して、個人的にはAutonomous Databaseは下記の点が特に優れていると感じました。

●高可用性
  RACやDataguardが使用できる、無停止で最新のパッチが適用される、など。
●極めて優れた性能
  セッションでは、他社の同じ価格帯の列指向DBサービスとADWの性能を比較した結果、6~10倍の性能差が出た、という結果も紹介されておりました。
●親和性
  もちろん、既存のOracle Databaseをそのままクラウド環境に移行することができます。

OCI(Oracle Cloud Infrastracture)のターゲット

いくらAutonomous Databaseが高可用性・高性能とはいえ、既存のオンプレ環境で稼働している基幹システムの本番環境をすぐにOracle Cloudにリフトする、というのは現実的ではない気がします。そこで、Oracleとしても、まずは以下をターゲットにしているというのがセッションの内容から読み解くことができました。

●基幹システムの検証環境
●既存Standard Editionユーザ

1点目の基幹システムの検証環境は、まずは検証環境として利用してもらい、本番環境の移行の実現性を評価してもらう、という道筋ですね。

2点目の既存Standard Editionユーザというのは、既存のStandard Editonライセンスを持ち込む(BYOLする)と、Autonomous Databaseを安価に利用でき、Enterprise Editon相当の機能も使用できるそうです。Oracleとしては、SEライセンスの廃止を見越しているようですが(Oracle RAC 19c では既にStandard Edition は非サポート)、特に日本国内にはSEライセンスユーザが数多く存在しているのも事実です。その受け口としてAutonomous Databaseを利用するというのは理にかなっていると言えますね。

所感

Oracle Cloudが国内での開発・普及に力を入れており、東京リージョンが開設された、という情報は把握していたのですが、今回のイベントに参加して、考えていたよりも早く普及が進みそうだと感じました。それだけの熱量のあるイベントでしたし、スピーカーの方々の「もっと伝えたい」、聴講側の「もっと知りたい」という熱意をひしひしと感じることができました。

個人的には、前述したStandard Editionからの移行、基幹システムの検証環境としての利用、というターゲットを確実に取り込むことができれば、一気にOracle Cloudが認知・利用され、シェアを奪うことができるのではないかと感じています。

一方、OCIとしては、DBサービス以外に他社クラウドサービスより優位な点をあまり見出すことができませんでした。各社のサービスの特色が出始め、ユーザにも認知された結果、一部ではハイブリッドクラウド化、マルチクラウド化が進むのではないかと考えています。

当社Re:Qはこれまで、Oracle Databaseの知識・技術・経験はある種のアイデンティティであると捉え、これまでも数多くのお客様にプロフェッショナル・サービスとして提供して参りました。今後もお客様により良いシステムを提供するために、最新のトレンドをすばやくキャッチアップし、今必要とされる技術を身に付ける必要があると切に感じております。

また、このようなイベントやセミナーで得た情報や知識は、今後もブログという場で発信していきたいと考えております。長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • Line
  • Hatena
  • Linkedin

資料請求・お問い合わせはこちら

ページトップへ戻る